今日は仕事も無く休みだからと、神楽は朝食を食ったあと、新八の迎えで新八の家へと向かった。
まぁ、俺たちが休みなのは、いつものことだけど、今日は珍しくキャバの方が休みで、新八の姉であるお妙を慕っている神楽は、今日だけ向こうで寝泊りすることになった。

・・・というわけで、今日は一人でのびのびと過ごせそうだ、と思いながら、今週号のジャンプを持ってソファに寝転んだ。
そのとき、玄関の方で、誰かが来た気配を感じた。
どうせ、新聞勧誘か何かだろうと無視を決め込みかけた瞬間。



「あの・・・!誰かいますか?」



聞き覚えのある声に、俺はソファから飛び起きた。そして、急ぎ気味で玄関に向かい、戸を開けた。



「あ。おはようございます、銀さん。」

「ああ・・・はよ。」



声から予想していた通りの人物でありながら、まさかこんなときに来るとは思っていなかった人物を目の前にして、俺は微妙な返事しかできなかった。
情けねェェェ・・・!しっかりしろよ、銀さん・・・!!



「今日も遊びに来てしまったんですが・・・お忙しいですか?」

「・・・いや。全然。」

「そうですか、よかった。いつも、新八くんが出迎えてくれるから、今日は何かあったのかなァって思ったので・・・。」

「今日は休みだから。新八は家にいんだよ。」

「そうだったんですか。・・・神楽ちゃんは?」

「神楽も新八の家に行った。今日は向こうで泊まるらしい。」

「・・・もしかして、お妙さんもお休みなんですか?」

「そうらしいな。」

「それじゃ、一人でお寛ぎのところをお邪魔しちゃいましたね・・・。すみません。」

「いやいや。どうせ暇だから。・・・ま、立ち話もなんだし。上がれよ。」

「いいんですか?」

「遊びに来たんだろ?」

「はい。・・・それじゃ、お言葉に甘えて。お邪魔します。」



こうして、俺はを家に上げることに成功した。・・・・・・・・・って、別に、家に連れ込もうとか、そういう考えじゃねェよ?『トラブル』を期待してるわけじゃねェよ??さっき、ジャンプ読んでたけど、『トラブル』が起こりそうな話はまだ読んでねェから・・・!!



「ま、その辺、テキトーに座ってくれ。」

「ありがとうございます。・・・・・・何だか、二人きりって新鮮ですね!」

「ん?ああ、そうだな・・・。」

「・・・・・・そういえば。神楽ちゃんは、新八くんの家に泊まるんでしたっけ?」

「そうだけど?」

「じゃあ、神楽ちゃんの代わりに、今日は私がここで寝泊りしてもいいですか?」



あれ・・・?早速、『トラブル』発生??いや、でも、俺はギャグマンガの主人公であって、決して何%の主人公じゃないし。・・・って、それは『トラブル』とは関係ねェから。
・・・もしかして、銀さん焦ってる?・・・そりゃ、そうだ。が急に、こんなことを言うから・・・。



「え〜っと・・・。」

「すみません・・・。やっぱり、迷惑ですよね?」

「迷惑とかじゃなくて・・・。男と女が二人きりになるのは・・・ちょっとマズイと思うんだけど?」

「でも、神楽ちゃんとは、いつも二人きりなんですよね?」

「そりゃそうだけど・・・。」

「ダメ、ですか・・・??」



に、そんな悲しそうな目で言われたら、銀さん断れません・・・!!
という理由だけではなかった。俺は、の境遇を思い出したから、断らなかった。

の家は、両親が働きに出ており、結構な金持ちではある。ただ、その所為で、は家に一人でいることが多く、寂しい思いをしているそうだ。それで、両親に構ってもらえるようにしてほしい、と万事屋に依頼してきたんだが・・・。結局、構ってもらえたのは、その日だけ。また次の日から、両親は仕事熱心になっちまったそうだ。だけど、もそんな両親を応援したいと思うようになったらしく、少しは我慢すると決意したらしい。
・・・・・・だから、たまにはここに顔出していいぞ、と言ってやったんだ。そして、今日もは家に帰れば、一人で過ごすことになるんだろう。



「・・・わかったよ。泊まっていけよ。」

「本当ですか?!」

「ああ。どうせ俺も一人で暇だから。」

「やったァー!銀さん、ありがとうございます!!それじゃ、私、一旦家へ戻って、着替えとか持って来ますね!」



そう言って、は嬉しそうに出て行った。・・・よかった。
・・・・・・でも、着替え?・・・うん、別の部屋にいれば問題ないからね??
と、とにかく落ち着こうと、読みかけていたジャンプを開いた。・・・って、こんなときに限って、際どいシーンのページがァァァ・・・・・・!!!!俺は海賊の話が読みてェんだよォォォォ・・・!!








「銀さん、ただいま戻りました〜。」

「・・・おう、お帰り。」

「ただいま、です。」



おそらく、「お帰り」なんて言われ慣れてないんだろう。が満面の笑みで答えた。
俺は全然頭に入って来なかったジャンプを置き、あらためての姿を確認しようと思ったが、何となく直視できなくて、の後ろにあった時計に目をやった。



「・・・・・・もう、こんな時間か。」

「そういえば、もうすぐお昼ですね。・・・あ!泊めてもらうんだから、私が料理しましょうか!」

「・・・いいの?」

「はい、もちろんです!むしろ、それぐらい、させてください!・・・でも、今ここにある材料を使っちゃったら、御礼にならないですよね・・・・・・・・・。それじゃ、買い物に行って来ます!」

「待て待て。今から買いに行くのかよ。」

「そ、そうですね・・・。今から買いに行って、準備してたら、結構時間経っちゃいますよね・・・。じゃあ、晩御飯を作ります!」



はすっかり、そう決意したらしく、俺が何を言っても無駄だろうと思った。・・・意外と、頑固なんだよな。
俺はソファから立ち上がって言った。



「じゃ、昼はどっか食べに行くか。」

「いいんですか?!」

「ん、別にいいけど?」

「何だか、デートみたいですね!」



・・・ちゃん?本当、銀さんを困らせないでくれます??たしかにね、デートに見えなくもないよ?でも、男女で仲良い友達って人たちもいるわけで・・・。
って、俺は誰に説明してんだよ・・・。



「そうだな。んじゃ、昼食いに行って・・・その後は晩飯の買出し、ってデートコースはいかがですか、お姫様?」

「はい、わかりました!」



よくやった、俺!!ちゃんと冷静に返せた、偉い!!しかも、も喜んでくれてる。うん、銀さんナイス。やる時はやる男だよ!・・・・・・いや、そっちの「やる」じゃないからね!本当、今晩の期待なんてしてませんからァァァ・・・!!








「・・・はい、着いたと。ここでいいか?」

「はい、どこでも構いません。銀さんと一緒に食べられるのなら。」



冷静になった俺に、は飛び切りの笑顔でそう答えた。・・・全く・・・・・・、マジで可愛すぎ!



「じゃあ、入るか。」

「は〜い。」


“カランコロンカラーン・・・”


「いらっしゃいませー!」








「ふ〜・・・、食った食った。」

「はい!ご馳走様でした。」

「んじゃ、そろそろ行くか。」



そう言いながら立ち上がり、俺はテーブルに置かれた白い紙、つまり伝票を手に取った。
やっぱり、ここは男の俺が払うべきだよな。・・・たとえ、今月がどんなに苦しくても!今月どころか、ほぼ常に苦しくても!



「あ、銀さん!待ってください。」

「ん、何だ?」

「お家でも言ったように、今日は私が御礼をしたいので、私が行きます。」

「いや、でも・・・。さすがに・・・。」

「お願いします!!」

「・・・・・・じゃあ、今度は奢らせてくれよ?」

「でも、それじゃ、御礼にならないような・・・。」

「あっそ。んじゃ、俺払ってくるから・・・。」

「わ、わかりました、わかりました!!次、お願いしますから・・・!!」



焦るも可愛い。しかも、銀さん、さりげに次のデートの約束もしちゃったよ。
・・・そろそろ、俺も落ち着いてきたのかもしれねェな。よォし!それじゃ、気合い入れて買い物へ行きますか!









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ついに、やってしまいました・・・っ!(笑)『銀魂』カテゴリー、初登場でございます!
完全に書き慣れていない臭が漂っておりますが、ご勘弁いただければ、と思います(汗)。これから、頑張ります!!
って言うか、慣れていないのに、後編に続くような長作ですみません;;もしよければ、続きも付き合ってやってくださいませ(苦笑)。

ちなみにタイトルは、英語よりも日本語がいいかなぁと思い、こんな感じにしました。最初は、『銀魂』らしく格言っぽい感じにしようと思っていたのですが、自分で考えられないので、ことわざそのまま、です(笑)。

('09/12/15)